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 ↑木々→白雪、ティアナ&はやて

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かさぶた。

御無沙汰してました。広告出ちゃってましたね失敬失敬(二回目)
生きててすみません安曇です。


久々に三題噺やってみました。
久々の更新ですが相変わらず暗いし意味わかんない感じかもしれません。御了承を。

なのはや風味ですがカップリング的なものはあんま関係無い感じでひとつ。


「シードル」「黄昏」「タンクトップ」。




 「かさぶた」


――は、はあ。よくもまあ。
はやてが少し席を立ち、カップに飲み物を注ぎ足して部屋へ戻ってくる間に、なのははベッドの上で眠っていた。部屋を留守にしていたのは、お湯が沸くくらいの間だけだったけれど。寝転がる様があまりにも無防備なのではやては目を丸くする。
熟睡している(驚く事に、本当に熟睡している)なのはを横目にひっかけつつ、持っていたお盆をそっと座卓に置いた。湯気をほんのりくゆらせて、物言わぬマグカップが二つ、そうして部屋の隅で縮こまる。口をつけようか僅かばかり悩みつつ、はやてはこてんと首を傾げた。
耳を澄ませば、なのはの寝息が微かに聞こえた。さざ波みたい、とはやては思う。彼女の意識もまた、穏やかな眠りに揺られているのかもしれない。白浜さながらのシーツに上半身を投げ出し、亜麻色の髪が緩慢に波模様を描いていた。余程疲れていたのだろうか。ついさっきまで普段通り会話を交わし合い、眠そうな素振りなど少しも見せなかったのに。
取り残されてしまったな、と思う。二人きりなのに一人ぼっちとは、これ如何に。寂しさに物理的な距離は関係しないのだと身に沁みる。横たわった親友を恨めしげに一瞥しても、呑気な事に腹まで出して、静かな寝息を零すだけ。甘い蜜でも吐き出しているのか、彼女の周囲の空気はくったりと色付いている。
良く寝ているものだからわざわざ起こすのも忍びない。それに、ここまでノーガードのなのはも珍しい。これ幸い、とはやては観察に徹することを決め込んだ。
夕暮れ前の部屋は霧のような光に満たされ、なのはの体には柔らかなヴェールがかかっている。しどけない寝姿は、まるで薄雲に隠れた月のようだ。緩んだ頬や日に焼けた肩を、林檎色の光が転がって、はやての眼底をちかちかと刺激した。ふぅん、とはやてが鼻を鳴らすと、吐息が塵を散らしながら解けていく。ぼんやりとした室内で、炭酸の泡が四散するみたいに。
捲くれた肌着からは健康的な腹部が覗く。規則正しく、ゆっくりと上下していた。よくよく眼を凝らすとようやくわかる程度の小さな傷跡が、そこにこびりついていた。はやてはベッド脇に膝をつき、なのはの腹部を指の背で撫ぜた。勿論、傷跡を拭い去ることは出来ない。歩くことすら危ぶまれた大怪我の名残が、悔し紛れにしがみ付いている。
小指の先程にも満たない、彼女の油断。
「……」
数年前、あの時なのはを攻撃した奴は(自立した意思を持っていなくとも)馬鹿だ。管理局の白い悪魔と揶揄される彼女を、そう簡単に撃ち落とすことなど出来やしない。はやてですら、なのはが敵に回ってしまったらと考えただけでうすら寒く思うのに。脳裏で描いたなのはは、臆すことなく真っ直ぐにはやてを睥睨していた。彼女を前にして無事で済むとは、誰も思わない。
もし。もし、自分だったらどうするだろう。はやてはなのはの体を何とはなしに撫でながら、目的地も定めず思索の海に漕ぎ出した。
先ずは、動きを封じることが先決だろう。と、口にするのは容易いが、なのはの機動性は十分にはやてを上回る。牽制しつつ足止めなど出来るだろうか。それとも、一か八かの大型魔法でノックアウトを狙う。いや、そんなに上手くいく筈がない。魔法のチャージ中であっという間に回り込まれ、逆にこちらが撃墜されるのが落ちだ。相手はあの高町なのはである。大空をぼろ雑巾のように堕ちるのは、きっと自分の方だ。目に浮かぶような鮮明なイメージに、はやてはぶるっと身を震わせた。おっかない。独り言が虚空に消えて行く。
遊ばせていた指先を、ついと立ててみる。少し伸びた爪の先がなのはの腹部を滑った。
(真っ向勝負じゃ、分が悪すぎるなぁ)
ならば、やはり一撃必殺などではなく、削り合いの持久戦に持ち込むのが妥当だろうか。幸い、魔力量と頭脳戦には定評がある。辛抱強さと狡猾さにも自信を持っている。地の利が働くと尚良し。ちまちまとはやてが注意を引いている隙に、シャマルあたりに手伝って貰い、なのはのリンカーコアを狙うのが望ましい。それならきっと、はやてにも勝算が生まれるはず。
「……」
はやての指は触れるか触れないかの力加減を保ちつつ、なのはの肌の浅瀬から、魚のように服の皺を辿っていく。胸の谷間あたりで、魚はゆらゆらと不安げに留まった。
どんな魔導師でも、リンカーコアを奪われればひとたまりも無い。とどめを差すのであれば、その後に心臓、或いは頭を潰すべきだ。残酷で明確に、冷酷に宣告するかのように、一思いに貫けばいい。あのガジェットもそうすべきだった。
――なんて。
寒くも無いのに、はやては背筋を張りつめさせる。
皮膜がするりと剥離してしまったかのようだった。単なる化けの皮が剥がれただけなら、こうも醒めやしない。寒くもならない。剥き出しにされたところから溢れるのは、黒い血だ。
――なんてことを。
一瞬で体内の水が全て入れ替わってしまったのか、内側できんと甲高く響き、心臓が縮こまった。追い出されていく水が目元に滲み、涙に変わってはやての頬を流れていく。
怖い。怖かった。
同じ部屋にいて、同じ色の光に包まれているのに。さっきまで、同じ空間を共有していたのに。触れ合っても混じり合わない二人の隔たりが怖かった。指先で感じる距離が遠くて悲しかった。そう感じさせるなのはが恐ろしくて、混ざり切れなかったものがどんどん溢れて、冷たい川になる。
奔流に飲み込まれ、押し潰されそうだと思った。氾濫するばかりだ。藁をも掴む気持ちでなのはの服を握ると、溺れる魚を掬い上げたのは、なのはの手のひらだった。
「……どうしたの?」
まだ眠りに半身を突っ込んでいるみたいに、平坦な声。それでもなのはの目は、真っ直ぐにはやてを見据えていた。生温い手を、やんわりとはやての手に添えている。
はっきり感じる体温に、はやての涙はずるずると尾を引いて流れる。はやてはひきつる喉から無理矢理声を絞り出した。
「なんも、あらへん」
「でも、泣いてるじゃない」
「なのはちゃんが悪いんよ」
「へぇ?」
寝起きの気だるさか、それとも、目の前でいきなり泣かれている上にそれを自分のせいにされたからか。なのはの語尾が剣呑に上がる。多分両方かな、と思いながら、はやてはもう一度繰り返した。
「なのはちゃんが、悪い」
「意味わかんないよ……」
なのはは心底呆れた様子で、緩慢に体を起こした。はやての腕は掴まれたままだ。なのはは一方の手で二三枚ティッシュを取ると、それではやての涙を拭う。掬いきれなかったものを、なのはは無理に拾うことはしなかった。
「泣いたらすっきりする?」
「すっきりせぇへん」
はやての滲んだ視界でも、なのはが戸惑っているのはわかった。きっと眉をハの字にして、心配そうにはやてを見つめている。その瞳に他意は無い。純粋に、はやてだけを心配している。
迷惑なのはわかっていたが、はやてにはどうにも止める事が出来なかった。仕方がない。なのははなのはであるが故に、はやてが流す涙の理由には、きっと一生気付けないのだから。
はやては自分の袖口で乱暴に涙を拭うと、力一杯口の端を吊り上げてみせる。上手く笑えていない事は、分かりきっていた。
「寝込み襲おうと思ったん。失敗や」
「そんなの、いつだって返り討ちだよ」
なのははしかめ面ではやての額を指差した。指先から放たれる仮想の砲撃に、はやての眉間に風穴が空く。そこから全てが押し流されてしまえばいいのに、どうしても胸のつかえは取れなかった。はやての内側は空っぽの現実感でいっぱいだった。おっかない、とはやての声が掠れた。
なのはが生きていてくれて、それだけで嬉しいはずなのに、どうしてはやては木の洞を覗きこんだような気分になるのだろう。
その理由だって、分かりきっていたけれど。



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なのはの主人公補正に対する皮肉と言うか何というか。
自分でも何書いてんのかわかんなくて迷走した上、お題に応えてる感があんまり無いっつー散々な結果。


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