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201004
Monday
こんにちは、安曇です。
タイトルの通りにしようと思って、無理やり絡ませてみました。
思いっきりパラレルだし、面倒だったので詳しい設定とかは全然考えてません。色々適当。
つか、某絵師さんとこの上着羽織った王(ですよ、ね?)がカッコよくて、触発されました。
単純に、この二人がこんなやり取りしてたら楽しいなあ、とか思って。
「……解せん」
顔面に苦渋を滲ませ、彼女はまるで泥でも吐き捨てるかのようにつぶやいた。整えられた両眉を顰め、眉間に深い皺を刻んでいる。普段なら愛嬌のあるその表情はひどく不機嫌そうに歪んでいた。引き締めた口元の下に左手を添えると、彼女はもう一度、苦々しげに口を開く。
「……解せん、解せんぞ!誰ぞ説明できるものはおらんのかっ!何故我が待機なのだ!」
天高く吠える狼、ではなく、まるで子供のように机の上でがあがあと喚き散らす彼女の背中を、はやては半眼で眺めていた。周囲にいる幾人かの局員たちは、それを遠巻きに見つめている。呆れているような、憐れむような、そんな彼らの視線を受け止めるのはとても心が痛かった。指令本部の中央に居座る、まるで鏡に映したかのようにそっくりな二人。傍若無人に振る舞う片方は単なる一戦闘員。対するもう片方――はやては、この指令本部で指揮を執る責任者だ。その目の前で机の上にどっかりと腰掛けた彼女は、司令官のはやてよりも偉そうで、煩くて、引っかけるようにして羽織っている上着がまた尊大な態度に拍車をかけていた。
はやては深くため息を吐く。と、手にしていた書類をくるくると丸め、いまだ吠え散らかす彼女の背中から一閃。
「うるさい」
「ぅわたっ!」
白い後ろ頭にぱこん、と叩きつけてやる。随分軽い音がしたけれど、彼女の頭に中身は入っているのかと、はやては本気で心配した。
そんなはやての心中など露知らぬ彼女――闇統べる王と名乗る、はやてと瓜二つの顔を持つ彼女は勢いよく後ろを振り返り、そこにいたはやてに向かって尚も噛みついた。
「はやてっ!何故我に待機命令など出ているのだっ!何か申し開きがあるのなら存分に聞いてやるぞ!」
「うるさい。あと行儀悪いから机から降りなさい」
「何だと、貴様だってたまに座っておるではないか!」
「制服で胡坐を掻かれたらこっちが困るんや!」
長机の上で胡坐を掻く彼女の姿は、全く同じ外見をしているはやてからして見れば、内心穏やかではない。単なる嫌がらせとしか思えないから質が悪かった。まあ、王がそんな遠回しで複雑な意図を抱くとは思えないけれど。良くも悪くも素直な存在、というよりも、単なる馬鹿だ。
はやてが腕を振りかぶって牽制すれば、王は怯んで渋々机の上から下りた。下りたが、椅子にそのまま腰掛けると深くふんぞり返り、両足を机に乗せた。存在自体がナチュラルに嫌がらせだった。
はやては考えるのを投げ出し、無言で王を見下ろした。
「我が出れば、一発でケリが着くであろうに。赤子の手を捻るより容易い事よ」
「子供の喧嘩に戦車ぶっこむアホがどこにおんねん」
「泣く子も黙る、と言うではないか。ただ座して待つのは本意では無い」
首をぐっと後ろに逸らし、王はうんざりと呟いた。うんざりしたいのはこっちだよ、とはやては何度目かの溜息を洩らす。現場に出れなくてうだうだとくだを巻いているこちらの方が、よっぽど駄々っ子だ。
「前線は未だ膠着状態が続いてるし、上からの命令が無い限りは、アンタを出すわけにはいかん。何か打開策を考えない限りな」
「ならば、その足りない頭を振り絞って、さっさとその策とやらを捻りださんか」
「アンタはホント一言多いな……」
はやては手元の資料を机の上にばらばらと広げつつ、空間モニタを展開させた。彼女の言うことにいちいち腹を立てていたら身がもたない。ちなみに全く動こうともしない王の為に、心優しいはやては仰け反る彼女の目の前にモニタが見えるよう位置を調整してやった。王は羽織っていた上着の袖で目元を覆い隠す。
「出れんのなら、見なくても良かろう」
そう、彼女は唇を尖らせた。
(拗ねたし……)
はやてはシャツの上から腕をさする。ちなみに上着を着ていない。何故なら、王が羽織っている上着こそがはやてのものだからだ。(地位が高いので)普通の隊員よりも少しばかり装飾が華美なはやての上着を羨ましく思ってか、
「小鳥の分際で偉そうなものを着ておるではないか!寄越せ!」
「偉そうじゃなくて偉いんや!」
と、言い争うのは毎度のことになりつつあり、はやてはもう半ば諦めている。必要以上に派手を好む王の性格はその戦闘スタイルにも顕著に現れており、戦闘員としての使いどころも正直難しく状況を選ばざるを得ない。自らのコピーなのだから、尚更だった。
扱い辛いというか、面倒くさいというか。むっつりと口元を引き結び、はやてを腕を組んだ。仕方がない、と盛大に溜息。溜息を吐くと幸せが逃げると言うが、今日だけで一体どれだけの幸せを逃したのかと想像するとはやてはとても憂鬱になる。
そう、ものすごく損をした気分になるのだ。だから、これはほぼはやての八当たりなのだった。
「――ほんなら、出させてやらんこともない」
「本当かっ!?」
王はばね仕掛けのように体を起こすと、まるで子供のように瞳をきらきらと輝かせ、
「聞いたか、エルシニアクロイツよ!ようやく我の出番ぞ!」
羽織っていた上着を引っ掴むと、はやてに向かって叩きつけるように投げ捨てた。そのまま軽やかに身を翻し指令室の出口へと向かう。
「その代わり、」
「ああ、勿論わかっておる。この闇統べる王、混沌たる力の全てを以て塵芥どもを一掃してくれるわ!ふはははは!何とも血沸き肉躍るのう!!」
王の薄白い満面に、猛禽類の獰猛さが浮かぶ。歯を剥き出しにしてうすら笑う彼女の背中に、はやてはにっこり笑いかけた。
「その代わり、なのはちゃんと一緒に行動するんやで」
「構わん!前線に出れるのであれば何でも……え?」
「なのはちゃんに宜しく言っとくわ」
よろしく、ね。
そう言って笑うはやての顔は、何故だか、つい今しがた王が浮かべていた笑顔ととても似ているのであった。
「その後、勝手な行動を取った王は高町なのはによってきっちり教導されたそうですよ」
「は、はやてはおっかないなぁ……」
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長くなりそうだったんで強引に終わらせました。ので、落ちが微妙です。
最後の二行は理と力、のつもり。
本当は、はやてと王でカッチョイイ作戦会議とかさせてみたかったんだんだけど、練り込み不足なんで安曇の脳内で補完しとく。
お粗末でした。